まず、成瀬さんがやられている理学療法士さんというのはどのようなことをされるお仕事なのでしょうか?
理学療法士とは、国家資格になるんですが、みなさんが想像しやすいのは「リハビリで歩行練習を手伝っている人」というイメージでしょうか。立ったり座ったりとか。ただ、理学療法士といっても、細かくいうと勤めている場所により行うことは違うんです。整形外科なら五十肩や腰痛、膝痛が多いとか、脳血管の病気が多い病院ですと、脳梗塞や脳出血をされた方のリハビリ、歩けなくなったとか起きれなくなったとかを改善するリハビリですね。また、循環器、呼吸器、ガン・・・やることは異なりますが、ざっくりいうと、病気やケガなどで、今までの生活のようにはうまくいかないという人を、なんとか状態を改善するように、立ったり座ったりの基本動作や電気治療器などの物理療法を使ったりする、そんな仕事ですね。
成瀬さんが勤めてらっしゃる病院では、どのような症状の方が多いんですか?
今勤めている病院はお年寄りの方が多いので、脳梗塞や脳出血などの脳血管の疾患、あと大腿骨などの骨折が多いですね。でも、それ以外の持病もお持ちの方が多いので、その方の全体を診ながら接しています。なるべくご自分のお家に帰って元の生活ができるようになれれば・・・。ただ、お年寄りの方が多いので、完全に治るというのはなかなか、難しく・・・。どうしても後遺症という形で残ってしまうんですね。ただ、後遺症が残ったからと言って、その人の人生が終わったわけではありません。後遺症が残っても、その人らしく生きられるようにサポートをしていく。それがリハビリテーションということになります。
その理学療法士というお仕事を通じて、成瀬さんがカラコロ健康ラボを開業したきっかけはなんだったのでしょうか?
元々、私は整形外科病院に勤めていたんです。骨折や膝や腰が痛い患者さんが多いのですが、そういう方はもちろん「痛み」が一番の問題になってきます。ただ、痛みっていうのは、身体を治療しただけではなかなか良くなってくれない方がいると気づいたんですね。実は心理的な問題も関係しているのでは、と。そこから心理の勉強も始めました。もう12年前くらいかな。痛みの緩和に、そういった知識も使えないかな、と。気持ちの部分と身体の部分両方を意識して、臨床を始めたいということが、カラコロ健康ラボを開業したきっかけのひとつですね。
心理の知識を勉強された後の臨床は、以前と変わりましたか?
気持ちの持ち方ひとつで「痛み」というのは変わってくる、というのは実感としてありました。たとえば、みんなで楽しいことをしてるときとか、笑ってるときとかって痛みのことをあまり感じないって経験ありませんか?で、帰って来てぼーっとしてると、「あ、なんか痛いなぁ」とか。そうして「痛み」に意識が向き始めちゃうと、「痛いなー、痛いなー」ってなる。意識が向きすぎちゃうと、痛いことに、いわゆる「執着」してしまう人も多いんです。痛いから病院もあちこち行く。そうなると、痛みとか病気のための生活になってしまうんです。そうすると、自分らしい生活を見失ってしまうんですね、全てを病気に捧げるような・・・。痛くても、遊びに行く人は遊びに行くんです。だけど、痛みに執着してしまっている人は、痛いと遊びにも行けない、休日でも家にひきこもってしまう。だから、余計痛みに集中してしまう、こういう悪いサイクルに入ってしまうんですよね。急性期はいいんですが、半年・一年という慢性期になってしまうと、「外にでてスポーツしたいけど、また腰が痛くなったら、明日の仕事に支障をきたすなぁ」とか、今痛くないのに、「なったらどうしよう」という気持ちになり、どんどん生活が狭まっていっちゃう。それで、外に出るのは病院に行く時だけになるパターンとか。今までやっていた趣味や習い事なんかもだんだんでなくなっちゃうんですよね。そうなると、痛みが無くなったり、和らいだ後も、なかなか元気だった以前のような生活に戻れない方も多いんです。
なるほど。確かにそれはもはや身体の問題ではないような気がしますね、気持ちの持ちようというか。それでは、カラコロ健康ラボさんでは、そのような方がいらっしゃったらまずどのようなことを行うのでしょうか?
たとえば、病院はもちろん「痛みをとる」ことに注力するんですね。でも、痛みがとれても、長年患っている人が、元気だったころのような生活ができるかというと、さっき話したように、「再発したらどうしよう」という不安までは取れない方も多いんです。そうなると自分の生活が楽しい生活じゃなくなっちゃうんですよね。だから、カラコロ健康ラボでは、痛みをとるだけじゃなく、「生活が楽しい」とか「自分らしい生活」・「自分が本当に望む生活」ができるように、なんとかそこまでもっていけるように、ということを前提にお客様と向き合っています。そこで私はお客様とまず一緒に「目標」を立てます。ご本人に「痛みがとれたらどんなことをしたいですか?」、「痛みがあるから困っていることや我慢していることはありますか?」ということを問いかけます。そこをちゃんとしっかり聞きます。たとえば、「仕事ができなくて困ってる」とおっしゃったとすれば、「じゃあ仕事ができるようにしましょう」という場合もあるし、「腰が痛いので、週末は家にこもっています」という場合もあるでしょうし。そんな人の場合、「本来、週末はどんなことしてたんですか?」と問いかけてみることもできます。「週末は子どもと公園に行ってたよ」って話をしてもらえれば、「じゃあ、公園でお子さんと遊べるようになりましょう!」というお話ができるんですね。腰の痛みがとれるというのはあくまで通過点で、とった上でどうしたいのか?これがさきほどお話した目標ですね。痛みをとるというのが前提としてあるのですが、どうしてもとりきれない痛みというのもあります。だけど、痛みが完全にとれなくても、その目標が達成できる場合もあるわけです。重要なのは結構そこで、「ちょっと痛いけど、やりたいことができた」のか「痛くないけど、やりたいことをやらない」のか。痛みはとれたけど不安はとれない、というのはちょっとまずいかな、と。痛みをとるだけで終わりにはできないかな、というのが私の考え方ですね。
これは大きな病気の場合でも同じで。病気のことだけ考える生活って辛いものがあって。いつも病気のことばかり考えて、「また、再発するかも」とか、食事療法だとか、通院のこととか・・・。もちろんこれは大事なことでやらなきゃいけないことなんだけど、全てじゃないですよね。家族とどう過ごすのか、自分がしたい生活は何なのかっていう自分のこれから先の人生のことを考えることが大切じゃないかなって。病気のことばかり気にして生活しても、しょうがないじゃないですかって。たとえばリウマチとか、現代の医学では完全には治らないって言われてるような病気であっても、ただそれに悲観してもしょうがないので、それを受け入れて、受け入れたうえで、じゃあどうしていこうかっていうことの方が重要です。病気を治すだけにエネルギーを使っちゃてる人が多いような気がするんですね。それよりも自分の人生をどうするのかっていう方に向いていかないと・・・。よく「闘病生活」っていうけど、本当に病とだけ闘っていても・・・。もっと自分の人生を見てもらいたいと思うんです。病気だけが人生の全てじゃないし、ご本人をサポートしてくれる方もいることに気付いてほしいし。現代の医学では難病と言われている病気であっても、それで人生終わったわけではないので。私が根本的にお伝えしたいことは、痛みや病の大きさの話ではなくて、その痛みや病を受け入れ、ご自身がこれからどういうふうに生きるのか、それをご一緒に考えさせてもらえればうれしいですね。
お話を伺っていますと、身体のケアと心のケア、二つのアプローチがあるように感じたのですが、成瀬さんは具体的にお客様へどのような方法で接しているのでしょうか?
私の場合、身体のケアと心のケアを分けて進めていくわけではなく、同時進行で行います。直接的な痛みへのアプローチは、理学療法をベースに今までの経験・臨床により培った方法でアプローチしていきます。痛みは、身体のバランスが悪くなって症状がでているので、直接痛みがでている部位だけを集中的にやるわけではなく、関節の動きが悪い部分を緩めたり、痛みが出ている関節に負担がかからないような身体の使い方ができるようにしたり。身体全体のバランスを整えて、痛みを和らげていきます。
ただ、それは今までやってきた理学療法士の仕事に近い部分で、カラコロ健康ラボでは東洋医学的な考えも取り入れています。特に経絡(けいらく)というエネルギー的なものも見ています。当ラボでは各経絡と関係した筋肉の力の入り具合を検査して、各経絡のエネルギーがちゃんと流れているのか?滞っているのか?を評価して、調整していきます。目には見えないけど、血液と同じで、経絡の流れが悪いと力が入らないんですね。で、経絡には、さきほど話したように筋肉との関連があるんですが、経絡は感情にも関連があると言われているんです。そうすると、経絡でエネルギーが弱い部分を診ていくと、その人の心理的・精神的ストレスがどんなことなのか、っていうのが見えてくるので、話もしながらそこを調整していくんですね。それをやっていくと、今まで一歩踏み出せなかった人、たとえば、週末なかなか外に出られなった人が、「ちょっと外に行ってみようかな」、って気持ちが出てくるんですね。そうなると、その人の「生活」が変わっていくんですよね!だから、身体のケアと心のケアが別個じゃなくて、身体と気持ちの部分をリンクさせて進めていく感じですね。
身体が痛い方へも気持ちの施術もやるし、気持ちの面が主な人へも身体の施術もやりますね!
じゃあ、カラコロ健康ラボさんにいらっしゃる方は、身体が痛い人ばかりではないんですか!?
そうですよ。うちに来る人は、いわゆるあがり症とかパニック障害の方もお見えになりますよ!心療内科さんなどへ行ってらっしゃる方も来ていただいていますね。そういう方も、身体の調整や経絡のエネルギーを行いますね。もちろん、メンタル面のことで来ていただく方なので、主として、今まで学んできた心理学の知識を使いながら、問題の根本となる部分を、脳の中を書き変えていくようなアプローチで接していきます。たとえば「暗いところが怖い」というのは、もしかしたら子供の頃、押し入れに閉じ込められた経験からくるかもしれません。その根本的な部分を、パソコンのハードディスクに上書きするように、書き換えていくイメージですね。「暗い=怖いではない」というような。ただ、心の問題も身体を使って解消するし、身体の問題も心の部分を使って解消していく、その意味をこめて、「カラコロ健康ラボ」という名前をつけました。身体の問題も心の問題もリンクしている。だから同時にやっていきましょう、というのが私のスタンスですね。
まだ、開業されて3ヶ月とのことですが、今までのお客様の中で、改善された体験談はありますか?
40代の女性なんですが、リウマチという診断を受けたんですね。いろいろ節々が痛くなって、病院で薬はもらってるけど、家事や仕事が大変になってきていたんです。仕事も、常勤で働いていたのですが時間を減らしてパートになろうか、っていう話が出ていた頃で。お子さんもいらして、一番下の子はまだ小さいので、休みの日に公園に連れてってあげたいんだけど、なかなかそれも難しくなっていたんです。で、うちに来て、痛みは落ち着いてきたんですが、それよりも考え方がポジティブになってね。お子さんと公園に行けるようになったし、仕事もパートではなく、常勤のまま続けています。そういう意味では生活が変わったと言ってもらえましたね。で、ここで大切なのは、彼女の痛みはだいぶ改善されましたが、完全に消えたわけじゃないんですね。それでも、週末お子さんと公園に遊びにいけるようになったとか、家事も前よりは大変じゃなくできるようになったとか。リウマチが完全に治ったわけではないけど、生活自体がガラッと変わったって言う、私の中では望むような形の改善の仕方をしてもらえて嬉しかったですね。彼女だって痛いのは痛いけど、その病気を受け入れたうえで、この先どうやって過ごしていくんだ、という考え方になってもらえたことが良かったですね。病気におびえたり不安になったりするんじゃなく、もちろん病気と闘うわけでもなく。ある意味、「病気を受け入れる」。そのうえで「どういうふうに生活できるかな」とか「どういうことができるかな」とか、そういうふうに変わっていくと、この先の生活が自分らしいものにしてもらえると思います。だから、このカラコロ健康ラボは、いろいろなところに行ったけど、なかなか状況が良くならなくて悩んでいる方に一番来ていただきたいですね。
今までのお話をまとめてみますと、痛みを軽減させることはもちろんですが、痛みを取ることだけに焦点を当てるのではなく、「病気や痛み、そして、それによる不安や怯えをいかに受け入れるか?付き合っていくのか?」の考え方をご提案いただけるという意味も含まれているような気がします。
そうですね。もう一度「自分らしい生活」を取り戻してほしいというのが一番の想いですね。そこをなんとかしたい、その一心ですね。自分がどう生きたいのか、を含めてね。それがお客様へ最初にお話しする「目標を立てる」というところなんです。「痛みがとれたらどうしたいの?」というところを一緒に突き詰めてやっていきたいんです!もしかしたら痛みは残るかもしれないけど、その先にある「楽しい生活」・「自分らしい生活」の喜びをお客様に感じてもらえれば何よりうれしいです!
成瀬 友貴
カラコロ健康ラボ
1995年から理学療法士として病院勤務。整形外科病院で9年、リハビリテーション病院で11年の臨床経験を積む。その中で痛みの治療に興味を持ち、理学療法を中心に関節系の治療手技や足底板の研修などを中心に学び、臨床を積む中で痛みというものは、精神的な問題(ココロ、気持ちの問題)に大きく影響を受けているということを実感。心と体、経絡などのエネルギーなどの繋がり、関係性を系統化した、タッチフォーヘルスを学ぶ。心と体は別々ではなく、同時に治療することで効果が発揮されると思うようになり、2015年7月、カラコロ健康ラボを開業。
【経歴】
・1995年~ フジ虎の門整形外科病院 理学療法科勤務
・2004年~ いきいきリハビリテーション病院 理学療法科(現 富士いきいき病院)
・2005年~ いきいきリハビリテーション病院 理学療法科科長
・現在、富士いきいき病院にて午前中のみ勤務。午後はカラコロ健康ラボにて施術を行う
【資格・免許】
理学療法士(国家資格)/国際救命救急協会 CPR(心肺蘇生法)インストラクター/介護支援専門員/福祉用具専門相談員
【その他】
入谷式足底板(上級コース終了)/Ken YamamotoTechnique (KYT)ベーシックコース、アドバンスコース終了/ヒプノセラピー